ぬるで

大学図書館員の日常と非日常。

大学図書館の評価報告書と未来構想

はじめに

 ぬるで氏は大学図書館のいろんな評価報告書と未来構想を読んで、大所高所から、これから大学図書館員が進むべき道を考えてみた。エッヘン。

 2022年4月から国立大学法人の第4期中期目標・計画期間が始まったので、それと合わせてなのか分かりませんが、自己評価・外部議評価報告書や未来構想かいくつかの大学で発表されていました。これにかこつけて、考えてみましたとさ。

自己評価・外部議評価報告書

 まずは各大学図書館の自己評価・外部議評価報告書の、特に課題について見てみたよ。

 ここでは課題を多く取り上げるので、良い面が少ないように見えますが、もちろん各図書館の良い評価もありますよ! というのを急いで付け加えておきます。

北海道大学附属図書館

 評価とは関係ないですが、CCライセンス(CC BY)が付与されているので、利用のハードルが低いなあと思いました*1。また、アンケート調査の自由記述も公開されていて、面白かったです。

令和元年度北海道大学附属図書館自己点検・評価報告書(平成28年度-令和元年度)

 2020年3月発行。「教育学習支援」「研究支援」「連携」「社会貢献と国際化」「組織運営」の5つの観点から点検・評価したもの。上記の5つの観点に小項目があり、それぞれについて現状・評価・課題が行われています。

 喫緊の課題は以下の3点。

  • 電子ジャーナルの整備
  • データベースの整備
  • 館長の副館長兼務[←後述の外部評価報告書で「解消された」と書いてあります。]

電子ジャーナル・データベースの充実・予算確保はどこもそうだろうなぁ。

 また、評価・課題で気になった記述は、以下の16点。良い評価には★を付けました。

    I 教育学習支援
  • (1.2 開館時間)延長は経費負担の面で限界
  • (1.4 相互利用)海外からの文献入手に時間がかかる
  • (1.7 特別修学支援(障がいのある学生の図書館利用支援))電子化のための予算確保や作業の外注化等をすすめる必要
  • (1.8 学生協働)手間をかけずに学生と協働して図書館事業を運営する必要
  • ★(2.2 目録データの整備)遡及入力事業の完遂
  • (2.4 保存)狭隘化
  • (3.学習環境)無線LANの接続の悪さ
  • II 研究支援
  • (2.北海道大学学術成果コレクション(HUSCAP))新JAIRO Cloudへの移行を検討
  • (3.オープンサイエンス)研究データの公開に対応していく必要
  • III 連携
  • (1.学内)学内関係部署との連携は不可欠
  • IV 社会貢献と国際化
  • (1.1 図書館の公開)娯楽や休養場所の充実にまで拡大することのないよう留意
  • (2.1 留学生支援)カウンターでの英語対応
  • V 組織運営
  • (1.2 図書館職員)戦略的な人材育成策を一層活用するための制度的,財政的学内支援体制の整備
  • (2.予算)経費節減の努力だけでは立ち行かない状況
  • (3.施設)長期的な維持修繕計画の策定が必要
  • (7.広報)各広報がばらばらに行われ,効率的・有機的な広報が行われていない

令和2年度北海道大学附属図書館外部評価報告書

 2021年3月発行。「「教育学習支援」「研究支援」「連携」「社会貢献と国際化」「組織運営」の5領域に、令和元年度後半から社会の大きな課題となった感染症対策を追加した全20項目*2について評価」したそうです。0~3点の4段階評価。各項目について【優れていると評価できる点】【改善の必要がある点】【その他コメント】が記されています。

 総じて、良い評価を得ているなあと感じました。

 この報告書で気になった記述は、以下の17点。

    I 教育学習支援
  • ★(1.利用者サービス)医系グループによる文献検索相談・代行サービスや、北キャンパス図書室での研究業績評価に関するセミナー
  • (1.利用者サービス)特にラーニングコモンズなど、場所は提供しているがそれ以上でもそれ以下でも無い
  • (2.蔵書管理)狭隘化
  • (2.蔵書管理)増加し続ける蔵書をどのように管理し続けていくか
  • (3.学習環境)全体的に館内のあちこちで様々なポスターがセロテープでべたべたと貼られている点
  • II 研究支援
  • (1.学術研究コンテンツの整備)[電子ジャーナルの整備は]国内大学に限らず、世界的な重要問題であり、北大で改善できるほど簡単ではない。
  • (3.オープンサイエンス)北方資料については、データベースからデジタルアーカイブ化、画像のオープン化への転換を目指すべき
  • IV 社会連携と国際化
  • (2.国際化への対応)職員の英語スキルの向上を期待したい。
  • V 組織運営
  • ★(1.組織)正規職員数の多さは驚異的
  • (1.組織)修士号や博士号所有者など、専門的知識を有する職員をどのように確保するか。
  • (1.組織)医系グループなどが持っている「わざ」を、他の職員にどのように伝えていくか。
  • ★(2.予算)基盤経費が年々削減される中、学生用図書費の特定経費化に成功したことは評価
  • (3.施設)自動化書庫は見かけ上素晴らしいが、維持費が思いの外かかる
  • (3.施設)サービス提供側の職場環境が狭隘で窮屈さを感じた。
  • (8.点検評価)[利用者アンケートの]傾聴すべき意見・要望[について、(中略)]前向きに捉えて改善に取り組もうという意思が伝わってこなかったのが残念
  • VI その他
  • ★(2.その他)医系グループにおけるシステマティックレビュー作成支援等の意欲的な取り組み
  • (2.その他)知見がどうしても個人に蓄積されていくため、それを全体に還元し伝えていく方略

千葉大学附属図書館

 「松戸*3格差」というのがあったんですね。「解消が図られた」とのことで、良かったです。

2021年度アカデミック・リンク・センター/附属図書館自己点検・評価/外部評価委員会報告書

 2022年1月発行。評価項目は「管理・運営」「評価期間中の特記事項」「人的支援」「空間整備」「コンテンツ」「教育基盤の支援」「地域・社会連携」「他機関連携」の8項目。外部評価委員会報告書については、総評の後、各項目について、評価コメント・改善に向けての提言・その他中項目に対する評価・提言・コメント等が記述されている。

 こちらも総じて、良い評価を得ているなあと感じました。

 自己点検・外部評価含め、この報告書で気になった記述は、以下の24点。

    外部評価委員会報告
  • ★(1.管理・運営)「知のプロフェッショナル育成」をめざして整備された5部門体制は効果的に運営
  • (1.管理・運営)大学総経費中の図書館運営費の比率が国大平均を下回っていることの影響が心配
  • (1.管理・運営)Webサイトの情報は充実しているが、いずれもスマホ対応(レスポンシブル)でない点は改善された方が良い
  • ★(2.評価期間中の特記事項)「アカデミック・リンク松戸」により、いわゆる「松戸格差」の解消が図られたことを高く評価
  • (2.評価期間中の特記事項)アフターコロナ期のニューノーマルに対応したサービス体制を確立することが課題
  • ★(3.人的支援)ALPS プログラムが全国の教育関係共同利用拠点として支援人材育成に取り組んでいることは高く評価できる。
  • (3.人的支援)サブジェクトライブラリアンを養成するプログラムを検討していただけるとありがたい。
  • ★(4.空間整備)学習行動・ニーズなどをめぐる質的な調査を含めて、利用に関する調査が種々、実施され、分析結果が改善に活かされている
  • (5.コンテンツ)電子ジャーナル類の価格高騰の問題への対応
  • (6.教育基盤の支援)課外学習支援、オンライン/オフライン/ハイブリッドにおける支援のあり方、関わり方への整理が必要
  • ★(8.他機関との連携)大学学習資源コンソーシアム(CLR)の立ち上げ
  • ★(全体に対する意見)千葉大学はこの分野における日本のリーディングユニバーシティである
  • 自己点検・評価委員会報告
  • (1.管理・運営)活動に対する教職員の負担感や課題意識の確認については、今後の課題
  • ★(1.管理・運営)コロナ禍におけるメディア授業の円滑な実施への貢献は評価
  • (1.管理・運営)会議の数や時間の縮小に努め、実質的な意思決定の在り方を模索すべき
  • ★(2.評価期間中の特記事項)学生から「松戸格差」と言われていた松戸キャンパスの学習環境改善がなされた
  • ★(2.評価期間中の特記事項)新型コロナウイルス感染症対応に関して、迅速に適切な対応が行われた
  • (2.評価期間中の特記事項)ニューノーマルの視点からの学習環境やサービスの見直し
  • ★(3.人的支援)ALPS プログラムは、「教育・学修支援専門職」の確立に向けて、様々な新たな取り組みを開発・実践している。
  • (4.空間整備)空間整備・学生の自習支援に力を注ぐあまり、5 に記すように、図書館の本務である資料の整備に予算・人的支援が十分に回っていないのではないか、と危惧
  • (4.空間整備)ポストコロナにふさわしい空間・設備の検討は大きな課題
  • (5.コンテンツ)図書の受け入れ冊数が減少傾向にあることが懸念される。
  • (5.コンテンツ)世界的に問題となっている電子ジャーナルの高騰への対応
  • ★(8.他機関との連携)著作権法改正にむけての大学の対応について、大学間の連携のなかで、センター⻑が主導的な役割を果たしたことを高く評価

東京大学附属図書館

 新図書館計画(10年計画)は、やることがデカいし、数字のいちいちが大きいなあと感じました。

令和元年度東京大学附属図書館自己点検評価報告書(平成25(2013)年度~平成30(2018)年度)

 令和2年3月発行(令和3年3月一部修正)。はじめに、活動概況、評価、まとめと課題という項目立て。他の大学図書館の評価と違い、点数付けがなく、文章で説明してある。

 この報告書で気になったのは、以下の12点。

    活動概況
  • ★(1 新図書館計画)「アジア研究図書館」の設置
  • ★(1 新図書館計画)別館(ライブラリープラザ・自動書庫)の設置
  • ★(2.4 資料の取り寄せ)図書借受については,「総図」の「H30」の件数が僅か3件
  • ★(3.1 全学共通経費による基盤的学術雑誌などの整備)本部からの全学的資金から毎年財源(11.5億円)を確保
  • ★(4.1 蔵書・コレクション)平成 30(2018)年度末の蔵書数は9,745,659冊(和書5,213,680冊,洋書4,531,979冊)
  • ★(4.1 蔵書・コレクション)所蔵雑誌種類数は冊子が169,875タイトルで,電子ジャーナルは10,151タイトル(アグリゲータ系も含めると29,421タイトル)
  • ★(4.3 デジタルアーカイブズ構築事業)学術資産のアーカイブ化事業を開始
  • ★(6.5 施設の整備)[総合図書館の]本館耐震改修工事および別館新営工事
  • 評価
  • (5 組織・運営)[拠点図書館と各部局図書館・室があるので、施設や職員などが]重複投資が必要となるという側面もあり,従来以上に合理化の議論が必要
  • (5 組織・運営)柏図書館の計画的な修繕についても検討する必要性
  • まとめと課題
  • [大学内に様々な利害関係者がいるので]大学図書館の新たな役割と位置付けられる活動を起こしにくい事情がある。
  • ライブラリープラザが,「コミュニケーションの場」まで昇華しきれていない。

令和2年度東京大学附属図書館外部評価報告書

 令和3年1月発行。評価・提言の文章でが主な内容。評価点はなし。

 この報告書で気になったのは、以下の5点。

  • (1.1 アジア研究図書館)サブジェクト・ライブラリアンも任期付とのことであるが,期限と同時に研究部門が解体とならないように努められたい。
  • (1.2 共働する一つのシステム)各研究科等の図書館室の職員に対して指揮命令権を持たない点で,職員の育成も系統だったものになっていない。
  • (1.3 オープンサイエンスへの寄与)図書館がオープンサイエンスに関与し,細分化が進む研究分野間の交流に寄与されることを期待
  • (3.5 災害対策)建物が大きく構造も複雑な総合図書館においては,実際の災害を想定した避難訓練の実施が望まれる。
  • (4.まとめ)各研究科等の図書館室との組織的縦割解消により図書館が一体となることが重要

金沢大学附属図書館

 次章に自己評価を受けて策定・承認された未来構想もあります。

金沢大学附属図書館自己点検・評価報告書

 令和2年3月発行。1.組織・管理・運営、2.情報資源・資料、3.サービス、4.学修支援、5.地域連携・社会貢献、6.経費、7.施設・設備の7項目。その下に小項目があり、状況の説明がある。7項目について、高い質にある・特筆すべき高い質にある・相応の質にある・質の向上が求められるの4段階の分析・評価をしている。

 この報告書で気になったのは、以下の12点。

  • (1.組織・管理)目録作成や資料提供に必要な専門知識を持った司書は同数(常勤に限っては2名減)で、増大する業務量に追いつかない
  • (1.組織・管理)[図書館システムと]「予算執行支援システム」との連携がなされていない。
  • ★(2.情報資源・資料)紙資料についての評価は「高い質にある」と判断
  • (2.情報資源・資料)保存書庫における保存方法については和装本など改善が必要
  • (2.情報資源・資料)[電子ジャーナル・データベースについて]毎年の購読価格上昇への対応
  • (2.情報資源・資料)書架狭隘化解消のために、蔵書の電子書籍への転換が求められる。
  • (2.情報資源・資料)[オンライン蔵書目録(OPAC plus)で検索可能な蔵書数が92万冊なため]総蔵書数191万冊と比較すると検索可能な蔵書の割合が半分に満たない状態
  • (3.サービス)図書館のウェブサイトに関する満足度が前回より低下していることは今後の課題
  • ★(4.学修支援)中央図書館及び医学図書館ラーニング・コモンズの増設、自然科学系図書館のラーニング・コモンズ設置
  • (6.経費)さらなる光熱水料の削減は困難
  • (6.経費)[電子ジャーナル・データベースについて]今後の購読タイトル数の維持については楽観視できない状況
  • (7.施設・設備)[中央図書館・保健学類図書館]書架収容率は依然高い

静岡大学附属図書館

 ちょっとだけ古いですが……。浜松分館は短い期間に2回も改築・改修予算が付いたんですね。うらやましい。

静岡大学附属図書館自己評価書

 平成31年3月発行。基準1 組織の目的、基準2 組織構成、基準3 教員及び支援者等、基準4 活動の状況と成果基準、5 施設・設備・学生支援、基準6 内部質保証システム、基準7 管理運営、基準8 情報等の公表、基準9 地域貢献活動の状況、基準10 国際化の状況の10基準について、(1)観点ごとの分析(2)優れた点及び改善を要する点が記載されている。

 この報告書で気になったのは、以下の13点。

  • (基準1 組織の目的)附属図書館独自の将来計画を策定
  • (基準2 組織構成)オープンデータ、オープンサイエンス等、今後大学にとって重要となることが予想される課題について、学内関連部署等と連携・協力し充分な体制を構築していく必要
  • (基準3 教員及び支援者等)専任教員の配置を求めていく
  • ★(基準4 活動の状況と成果)浜松分館の教員貸出冊数を「10冊」から「50冊」に改正
  • (基準4 活動の状況と成果)電子リソースや学生用図書等、研究・学習に必要な情報基盤の安定的確保。
  • (基準4 活動の状況と成果)オープンサイエンスやオープンデータ等、研究支援への対応。
  • ★(基準5 施設・設備・学生支援)[静岡本館の]5階は駿河湾を眺望できる開架閲覧室
  • (基準5 施設・設備・学生支援)静岡本館では書架収容力は限界を超えている
  • (基準5 施設・設備・学生支援)[静岡本館は]段差や隘路が多く安全な移動の障害がある
  • ★(基準5 施設・設備・学生支援)浜松分館の改築・改修
  • ★(基準6 内部質保証システム)附属図書館利用学生モニターの制度
  • (基準6 内部質保証システム)評価体制は確立されているが、実施には多大な労力を要する。
  • (基準7 管理運営)職員の知識・技能の習得や継承を組織として支える体制の確立が望まれる。

静岡大学附属図書館]外部評価報告書

 令和元年6月発行。自己評価と同じ10基準について、4段階で評価。また、総合評価のコメントが記述されている。

 この報告書で気になったのは、以下の11点。

  • (【基準2】組織構成について)電子リソース、特に電子ジャーナルに関しては各大学とも悩ましい問題である。
  • (【基準3】教員及び支援者等について)専任教員による図書館運営組織を構築するより、図書館運営を熟知した専任司書等の職員を配置することが重要
  • (【基準4】活動の状況と成果について)講義開始時間(午前8時40分)より早い時間に開館(現在は午前 9 時)できれば、学生のニーズに一層応えるサービスの提供ができるのではないか。
  • ★(【基準4】活動の状況と成果について)学生モニターの活動は、他の学生たちに刺激を与えるうえで、そして図書館運営の活性化にとっても評価できる。
  • (【基準4】活動の状況と成果について)[学生用図書費を]電子リソース経費との分離などにより以前の水準に戻せるような努力をお願いしたい。
  • (【基準5】施設・設備について)個人ブースの数が両館共に少ないと感じる。
  • (【基準5】施設・設備について)バリアーフリーに対する設置は十分ではない
  • ★(【基準6】内部質保証システムについて)組織としてのPDCAサイクルが円滑に機能している。
  • (【基準7】管理運営について)図書館のサービスは人の力に寄るところが大きいので、スタッフの安定確保(維持・拡充)は重要
  • (【基準7】管理運営について)附属図書館の機能を充実させるためには常勤の図書館職員の増員を大学執行部に要求するべき
  • (総合評価)物理的距離として離れている附属図書館の運営を客観的に評価するためには、実際に離れた図書館を運営している信州大学の事務方か図書館長を外部評価委員に加えるとお互いに相乗的な評価があると感じる。

この章のまとめ

 大学図書館の課題が見えてきましたね。いったんまとめます。ほとんどの図書館の課題(でぬるで氏の気になった部分)は以下のとおり。

  • (サービス)24時間365日開館
  • (施設)バリアフリー
  • (設備)書架の狭隘化
  • (資料)電子ジャーナル・データベースの整備
  • (組織)図書館員(サブジェクト・ライブラリアン)の育成
  • (組織)他部署・教員・学生との協働
  • (オープンサイエンス)紙資料のデジタルアーカイブ
  • (オープンサイエンス)研究データのオープン化
  • (予算)獲得手段の多様化の必要性

未来構想

 さて、では各大学図書館が課題解決のために、どのような行動を起こそうとしているのか、最近発表された目標や未来構想を見てみよう。

東京学芸大学附属図書館の使命と目標、取り組み ~デジタル社会の教育を支える「知の循環」の再構築~ 2022~2027

 令和3年10月25日学術情報会議決定。

 この「使命と目標、取り組み」で気になったのは、以下の5点。

  • (学術情報基盤の整備)紙媒体・デジタルを問わず、質の高い学術情報を提供する。
  • (学術情報基盤の整備)来館型サービスに加えて非来館型サービスの充実に努める
  • (学術情報基盤の整備)図書館職員は学術情報の組織化と利活用についての専門知識の習得及び能力向上に努め(中略)研究・教育を支援する。
  • (学生の学修を支援する拠点の一つとして機能)学生のアクティブ・ラーニングを支援
  • (教育現場、地域及び国際社会に貢献)研究成果及び教育コンテンツのアーカイブと発信の機能を強化

金沢大学附属図書館 大学図書館未来構想2022

 2022年2月14日教育研究評議会承認。大学図書館全般の動向、金沢大学附属図書館の課題、金沢大学附属図書館 大学図書館未来構想2022の基本コンセプト、金沢大学附属図書館 大学図書館未来構想2022のアクションプランという内容。

 この「未来構想」で気になったのは、以下の11点。

  • (基本コンセプト1:蔵書・電子媒体等による知の集積・保有,未来への継承)新たな形式(電子媒体)での知の集積・保有への転換
  • (基本コンセプト1)[紙資料は]電子化を進め,利用者がどこにいても,必要とする書籍やデータにアクセスできる環境を実現する
  • (基本コンセプト2:学修支援の機会・機能の提供,交流による新たな知の創造)誰もが気軽に立ち寄ることができ,交流によりそれぞれの感性が響き合う「新たな創造の場」であると同時に,学生にとって「心地よい居場所」となるよう再整備
  • (基本コンセプト2)[学修支援は]学生目線に即したレベルの高い支援
  • (基本コンセプト4:これからを支える人材の育成,多様な環境整備)事項の優先順位付けや取捨選択を行うとともに大学以外のリソースの導入も含めた,人材の確保と能力の向上を図る
  • (基本コンセプト5:公共的な施設としての基本的機能の改善・新技術の導入)バリアフリーの拡充やすべてのジェンダーが快適に利用できる環境整備等を推進
  • (アクションプラン1-1-2 所蔵貴重資料の電子化の促進)電子化を進めるため,計画的に予算要求
  • (アクションプラン2-2-3 レファレンスサービスの充実)専門的内容に関する支援についてのニーズを分析した上で,実施の可否・方策について検討
  • (アクションプラン2-5-1 研究データ管理支援への協力)研究データの保存並びにそのオープンアクセス・オープンサイエンスの実施を検討
  • (アクションプラン4-1-3 図書館職員の能力の向上)専門的知識や学習支援の経験に加え,デジタル化資料への対応等の新たな知識を習得し,実践する。
  • (アクションプラン5-4 館内のバリアフリー化)利用者動線の改善策について,施設部の協力を得ながら進める。

国立大学図書館協会ビジョン2025(おまけ)

 おまけです。国立大学の図書館では言及されることが多いと思うので。

 このビジョン2025で気になったのは、以下の6点。

  • (国立大学図書館の基本理念)知識,情報,データへの障壁なきアクセスを可能にし,それらを利活用するための環境を利用者に提供する
  • (重点領域1.知の共有:蔵書を超えた<知識や情報>の共有)教育研究成果の長期的な保存を図るとともに電子的流通とオープン化を推進する。
  • (重点領域1)他機関と連携した学術情報システムを高度化することにより,知の総体を対象として,必要な情報がより効率的・網羅的・安定的・継続的に発見できる環境を実現する。
  • (重点領域2.知の創出:新たな知を紡ぐ<場>の提供)人と知識や情報,あるいは人同士の相互作用を生み出すコミュニケーションの場を整備し,提供する
  • (重点領域3.知の媒介:知の交流を促す<人材>の構築)図書館職員を中心としてさまざまな能力を有する人材の集合体を形成する
  • (重点領域3)デジタル化資料への対応など新たな知識を職員に習得させ実践させる

この章のまとめ

 進むべき道が見えてきましたね。

 理念なので具体性に欠けるところはありますが、それはそれで考えるきっかけになって良いと思いました。具体策は個々の図書館員が考えて、まわりを巻き込んみながら実行しようというメッセージだと思いました。

大学図書館員(ぬるで氏)は何をすべきか?

 最後に、ぬるで氏は大学図書館員として何をすべきか考えてみた。思いついたものを列挙します!

  • どこの図書館も頭を悩ませている電子ジャーナル問題解決のため、20年くらいかけてダイヤモンドOAへの「転換」を図るよ。
  • ダイヤモンドOAで浮いたお金を24時間365日開館と職員育成(非常勤職員の常勤化)に使うよ。
  • 書架の狭隘化への対応のため、電子化した資料は共同保存書庫に送っちゃうよ。
  • 紙資料が無くなって空いたスペースをバリアフリー化して、学習支援サービス(レファレンス)を行うよ。
  • 研究支援サービスとして研究データの保存・オープン化から始まって、あらゆる研究サイクルに首をつっこむよ。
  • 予算や寄付金を得るために、ロビー活動や大学図書館の存在意義を発信し続けるよ。

ということかいな。おお、遠大。

おわりに

 ぬるで氏の行く末やいかに? 乞うご期待。個々の課題を認識→課題解決方法を検討→実践→再検討→実践の繰り返しですね。

参考

hdl.handle.net

hdl.handle.net

2021年度アカデミック・リンク・センター/附属図書館自己点検・評価/外部評価委員会報告書

https://alc.chiba-u.jp/hokokusyo/ALCLib_hokokusyo_2021.pdf

https://alc.chiba-u.jp/hokokusyo/ALCLib_hokokusyo-d_2021.pdf

 

令和元年度東京大学附属図書館自己点検評価報告書(平成25(2013)年度~平成30(2018)年度)

https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/sites/default/files/2021-03/self-evaluation_report_2020_rev.pdf

令和2年度東京大学附属図書館外部評価報告書

https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/sites/default/files/2021-02/libraryevaluation2020.pdf

 

金沢大学附属図書館自己点検・評価報告書

https://library.kanazawa-u.ac.jp/files/hyoka/tenkenR1.pdf

 

静岡大学附属図書館自己評価書

https://www.lib.shizuoka.ac.jp/wordpress/wp-content/uploads/evaluation/lib_self_assessment_2018.pdf

静岡大学附属図書館]外部評価報告書

https://www.lib.shizuoka.ac.jp/wordpress/wp-content/uploads/evaluation/lib_outside_evaluation_2019.pdf

 

東京学芸大学附属図書館の使命と目標、取り組み ~デジタル社会の教育を支える「知の循環」の再構築~ 2022~2027

https://lib.u-gakugei.ac.jp/sites/default/files/2021-11/MissionStatement2022_2027.pdf

 

金沢大学附属図書館 大学図書館未来構想2022

https://library.kanazawa-u.ac.jp/wp-content/uploads/2022/02/University-library-future-plan-2022-fulltext.pdf

 

www.janul.jp

 

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*1:もちろん引用の範囲内で利用しているつもりですが。

*2:全19項目っぽい。

*3:わが母校がある。

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