極私的こんな著作権法だったらいいな案
書物蔵さん(@shomotsubugyo)のツイート
これ、著作権者を含めてこの世の誰一人として得しないんだよねえ。そしてそのことを誰一人として問題にしない図書館界のアホばかマヌケぶり https://t.co/AkiKlaZnej
— 書物蔵:古本フレンズ (@shomotsubugyo) February 23, 2019
に触発されて。
はじめに
ILLで他大学図書館に論文集(図書)に掲載されている論文の複写を申し込むと,高い確率でこんな返事が返ってくる*1。
「複数著者による編集著作物のため,論文の半分までしか複写できません。お役に立てずに申し訳ございませんが,謝絶します。」
これを回避する方法を考えてみた*2。
図書館における著作権法概論
著作権法*3(以下,法という。)第31条の権利制限規定*4で,図書館は少し優遇されている。
第三十一条 国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この項及び第三項において「図書館等」という。)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。
一 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあつては、その全部。第三項において同じ。)の複製物を一人につき一部提供する場合
二 図書館資料の保存のため必要がある場合
三 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料(以下この条において「絶版等資料」という。)の複製物を提供する場合
~以下国立国会図書館に関する記述なので省略~
つまり,他の団体より著作物を使ってよい範囲が広いのだ。
でもILLや館内コピー機では「一部分」がネックになって,お客さんの「えっ,その論文*5全部欲しいんだけど」に応じられないのだ。
これをどうにかしたいなあと思っているんです。
極私的こんな著作権法だったらいいな案
嘆いていてもしょうがないので,「こんな法だったらいいのにな」を考えてみました。
でっかいこと*6
- 「一部分」を削除する。
一 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあつては、その全部。第三項において同じ。)の複製物を一人につき一部提供する場合
つまり,
調査研究目的なら,図書館資料を全部コピーしていいよにする。
中くらいのこと*7
「一 図書館等の利用者の求めに応じ、その非商業目的のための調査研究または私的学習の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあつては、その全部。第三項において同じ。)の複製物を一人につき一部提供する場合」
つまり,
非商業目的のための調査研究または私的学習目的でなら,全部コピーしても良いよにする。
ちっちゃいこと*10
- 「一部分」の中身を変更する。
一 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物または絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料に掲載された個々の著作物にあつては、その全部。第三項において同じ。)の複製物を一人につき一部提供する場合
つまり,
発行後相当期間を経過した定期刊行物に加え,絶版資料も全部コピーしていいよにする。
おわりに
次回は「じゃあ,どうやって」を考えてみたい。
サイゼリヤで少し書いたら,作家気分を味わえました。
*1:依頼が来たらこっちも返している。
*2:だってお客さんに説明するの面倒くさいんだもん。図書館のお客さんの時間を節約するため(by ランガナタン)。
*3:著作権法 | 国内法令 | 著作権データベース | 公益社団法人著作権情報センター CRIC
*4:著作権者の権利(勝手に複製されないとか,勝手に上映されない権利とか)を制限して,「こういう場合は著作物を使っても良いよ」という事例が書いてある規定
*5:とか記事とか
*6:色んな利害関係者を巻き込むこと。
*7:図書館業界と権利者団体の長い長い話し合いで解決できるかもしれないこと。
*9:少し違うかも。フェアユースについて,もっとちゃんと調べなきゃ…。
*10:図書館業界と権利者団体の話し合いで解決できるかもしれないこと。